フリーランスのイラストレーターさんになるにあたり、不安要素の1つとしてあげられるものとして『保険』があるのではないでしょうか。
一般的に企業に就職すると、会社の健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険に加入することになります。保険料は給与から天引きをされる形で、健康保険と厚生年金保険に関しては支払うべき金額の半分を会社側が負担し、雇用保険も一定割合を会社が負担します。労災保険にいたっては会社が全額を負担してくれるのです。
フリーランスになるとこれらの恩恵を受けることが難しく、だからこそ不安要素の1つになっていると考えられます。
今回は、保険の中でも特に重要な『健康保険』と『年金保険』についてまとめました。
将来フリーランスのイラストレーターを目指したい!という方、そしてフリーランスで活躍されていて、「保険っていったい何をしたら良いかわからないな」と思っているイラストレーターさんの不安に少しでもお答えできれば・・・・・・と思います。
◆フリーランスになったら切り替えよう!『健康保険』と『年金保険』
フリーランスになって重要となる保険は主に
・健康保険(=医療保険)
・年金保険(年金)
の2つとなります。これさえ理解していれば、ひとまずは問題ありません。
会社員だった方は会社が加入している健康保険や年金に加入している形だったと思いますが、
フリーランスになったタイミングで会社加入のものは継続できないため、自分で改めて加入する必要があります。
健康保険(=医療保険)について
健康保険といえば「国民健康保険(国保)」が一般的ではあるかと思いますが、実は他にも選択肢があります。
選択肢の中から、負担が軽減し、かつしっかりとサービスを受けられるものを慎重に選んでいく必要があります。
◆フリーランスデビュー!健康保険3つの選択肢
フリーランスデビューするとき、健康保険には大きく3つの選択肢があります。
その1 :会社の健康保険を任意継続
その2 :国民健康保険(国保)への加入
その3 :国民健康保険組合への加入
それぞれの特徴についてみていきましょう。
その1:会社の健康保険を任意継続
勤めていた会社の加入する健康保険を継続するケースです。退職時に契約を延長する形になります。
ただし、退職日までに2ヶ月以上継続して社会保険に加入していた人に適用されるもので、任意継続に加入できるのは「2年間」という期限もあります。また、会社負担分はなくなりますので全額保険料を負担する必要がでてきます。
手続きは退職日の翌日から20日以内に、健康保険組合で行います。
健康保険は毎年前年度の所得の大小によって金額が変わるという特徴がありますが、会社の健康保険に任意継続する場合、保険料率が変わらない限り保険料は加入期間中変更されません。
そのため、前年度の所得で国民健康保険が高額になってしまう人の場合は、任意継続を検討することをオススメします。
その2:国民健康保険(国保)への加入
国民健康保険料計算 参考サイト http://www.kokuho-keisan.com/
国民健康保険の保険料は自治体によっても、年度によっても変わります。この自治体間の差は意外と大きく、年間20万円以上の違いがでることもあります。フリーランスで住む場所を選ばずに仕事ができるという方は、保険料負担が少ない自治体に引っ越すのも一つの方法と言えます。
ただ先ほども記述しましたが、国民健康保険の保険料は前年度の所得によって計算されるため、サラリーマンから独立した人や昨年の収入が多かった人は高額な保険料となってしまうのが難点ともいえます。
保険料を支払うのが難しい場合は減免制度もあります。申請の方法などに関しましては各自治体によって異なるため、自分のところの条件を確認しつつ利用してみるのも良いかと思います。
その3:知らなきゃ損する!?国民健康保険組合への加入
さて、皆様は国民健康保険が別に地方自治体が運営するものではないものがあることをご存知でしたでしょうか。
国民保険組合とは、地方自治体と同じように国民健康保険事業を行っている事業主のことです。
つまり、加入条件さえ満たしてどこかの国民保健組合に入ることが出来れば、地方自治体の国民健康保険には入らなくても良いということにもなります。今回はその中でもイラストレーターさんにオススメの『文芸美術国民健康保険組合』についてご紹介いたします。
◆文芸美術国民健康保険とは?
イラストレーター・グラフィックデザイナー・Webデザイナー・漫画家・写真家・コピーライター・アニメーターなどクリエイティブ職のフリーランス(個人事業主)の方々にオススメする国民健康保険が文芸美術国民保険です。
フリーランスの加入が最も多く、メジャーな保険ともいえます。
その一番の特徴は『所得の大小にかかわらず保険料が定額』であることです。
例えば大阪市の国民健康保険の保険料で計算すると、後期高齢者支援を含めて一人計算年収300万で年間30万くらいになります。文芸美術国民健康保険(年間約20万2千)と比較すると所得が多い人にとってはかなりの保険料を節約が可能になると言えます。
上記のように一定の収入がある人にとっては、国民健康保険より断然安くなる可能性が高いため、文芸美術国民健康保険の加入はメリットが大きいと考えることができるのです。
フリーランスになる際は、ここまで紹介してきた3つの選択肢のうち、自分に最も適したものはどれかを予め会社を退職するまでに検討しておくことをオススメいたします。
年金保険(年金)について
健康保険の次は『年金保険』についてです。
年金は主に『厚生年金』と『国民年金』の2つになります。本当にざっくり説明すると
『厚生年金』=サラリーマンが加入する年金
『国民年金』=個人事業主(=フリーランス)が加入する年金
となります。
そのため、これまで会社員だった方は、会社が加入している厚生年金保険に加入していましたが、フリーランスになるにあたり『国民年金』の加入が必要になります。
国民年金の掛け金(=国民年金保険料)は、1人1ヶ月あたり16,260円(※平成28年現在)となります。
国の年金保険を支払うメリット!『社会保険控除』のおはなし
これまで会社の給与天引きで引かれていた年金を自分で支払うとなると、なんだか負担が増えたな・・・と思う人も少なくないと思います。それでも年金保険は払っておいた方が間違いなく良いのです。理由は『税金面でいえば国の年金保険の方が圧倒的に得』だからです。民間の年金保険よりも、国の年金保険の方がかなり優遇されているのです。
ここで大きなメリットとして紹介するのは『社会保険控除』についてです。
税金の面で、民間の個人年金保険は数万円程度しか控除が認められませんが、国の年金保険であれば、支払った額を全額控除することできます。年金保険を含め、社会保険に関わる費用は全て控除の対象になるのです。
このことを『社会保険控除』といいます。
例えば、フリーランスとして頑張った結果、年間で500万円の利益(所得)を得ることができたとします。通常この500万円に対して税金が課せられるわけですが、社会保険を支払っていると、ここからさらにその保険料を引いて課税所得(税金が課せられる所得)を求められることとなります。
国に20万円の年金保険を納めたとすると、『500万円(所得) - 20万円(社会保険控除) = 480万円』に対して税金がかかります。税率が10%だとすると、『20万円 × 0.1 = 2万円』も多く節税できる計算です。一方、民間の年金では前述の通り数万円しか控除の対象にならないため、節税できる額は少ないのです。
そして、年金として支払ったお金は高齢になったときに返ってきます。しかも、国の年金は高齢になったときだけに支給されるのではありません。病気や障害を負ったときに支給される「障害年金」や一家の働き手が亡くなったときに支給される「遺族年金」などもあります。もし年金を支払っていなければ、これら万が一の事態が起こっても保証はありません。このような事実を考えると、何かあったときの最低限の備えとして、国の年金保険をきちんと支払った方がよいと言えるのです。
将来の年金額を増やしたい!
先ほど会社員が加入する年金が『厚生年金』、フリーランスが加入する年金を『国民年金』だとざっくりと説明してしまいましたが、正確にいうと国民年金は全ての国民が加入するようになっているため、実は会社員も国民年金に入っています。厚生年金の中に国民年金が組み込まれており、従業員であると年金の半分を会社が払ってくれます。
つまり、
会社員: 国民年金 + 厚生年金
フリーランス : 国民年金
となるため、年金を支払う支出の負担としては会社員の時よりも下がりますが、その分高齢になったときにもらえる金額も会社員より少なくなります。
そこでフリーランスになっても将来の年金額を増やしたいという人のために『国民年金基金』というものがあります。
http://npfa.or.jp/system/profit.html
『国民年金基金』とは通常の国民年金に加えて、任意で加入できる年金制度です。国民年金に対して、将来の年金額をさらに上乗せすることができます。国民年金基金を納めた場合であっても、全額を社会保険料控除として差し引くことができます。そして、支払う額は自分で調節できるのです。(掛け金上限=月額68,000円)
年金額を増やしたいという方には検討をオススメいたします。
◆まとめ
●フリーランスになったらまず重要な保険は『健康保険(=医療保険)』と『年金保険(年金)』である。
●健康保険は自分の状況に合ったものに入る。
●フリーランスが加入するのは『国民年金』である。
●年金額を増やしたい場合『国民年金基金』というものがある。
健康保険や年金を自分で管理するとなると、分からないことも多く、知っておかねばならないことや手続きの多さに落胆してしまうかもしれません。
しかしこれらの知識はフリーランス人生の土台作りに必要なものとなります。保険はもしもの時に自分を守ってくれるものと言えますし、年金は老後に向けて貯蓄を蓄えられるだけではなく、掛け金によって所得控除の効果が望めます。
自分にあった保険を選択して、安定したフリーランス生活の第1歩を踏み出していってくださいね。