【インタビューvol35】
表情にこだわり生き生きとした空想動物を描くイラストレーター
- ”塗壁”さんのご紹介
重厚な厚塗りとスケール感のある構図で、モンスターやクリーチャーを
魅力的に描かれる作家様です。
ソーシャルゲームでのカードイラストや、映像作品のイメージ
ボード制作などで幅広くご活躍されておられます。
---ペンネームの由来はありますか?
今のペンネーム(塗壁:ぬりかべ)を使い出したのはpixivが
初めてだったのですが、アカウント名を決めるにあたり軽い
気持ちで一番好きな妖怪の名前からとりました。
そこからpixiv経由でお仕事を頂くようになり、便宜上アカウント
名をそのままペンネームとして使用して今に至ります。
偶然ですが「“塗り”かべ」というのがいかにも絵描きっぽくて
気に入っています。
---いつごろからイラストにご興味を持ちましたか?
イラストに興味を持ったのは物心がつく前からです。
随分昔のことなので具体的に何をきっかけに興味を持ったのか
は分からないのですが、よく砂場やチラシの裏に絵を描き
磁気で絵を描けるボード玩具を持ち歩いていたと
親は言っていました。
---どうやってイラスト制作を学びましたか?
基本的には独学です。
私がデジタルでのイラスト制作を始めた頃には既にプロの方々
がインターネット上にメイキング動画をたくさん上げていたの
で、それらを参考に勉強しました。
また、当時所属していた大学の制作系サークルで同じように
イラスト制作を志していた先輩方にも技術を教えていただきました。
---作品の制作使用ツールを教えてください。また、線画や塗りなど工程ごとに使用ツールを使い分けていますか?
制作にはほとんどPhotoshopを使用しています。
ただし、デザインの方向性を検討したり絵コンテ用の素材を描き
起こしたりといった、イラストのクオリティよりも数の多さが
求められる場合は紙とペンを使うときもあります。
その他にもインクが滲んだテクスチャや毛筆で書かれた文字と
いった、イラストで使用するための素材をアナログで制作する
場合もあります。
---1ヶ月の制作枚数はどれくらいでしょうか?また、月によって制作枚数にバラつきなどもありますか?
1か月間では背景込のキャラクターイラストでおおよそ10枚前後
の枚数を制作しています。
また、突発的に納期の短いお仕事を頂いたり、逆に自主制作の
ためにお仕事に割く時間を減らしたりもしますので、月別の制作
点数は大きく変動すると思います。
---作品のアイデアはどうやって生み出していますか?
まずは頂いた制作指示書をよく読みいくつかキーワードを拾う
ようにしています。そして、そこからできるだけ多くのモチーフ
を連想し、気に入ったものをデザインに反映するようにしています。
デザインにおいては色や形に自分の中で意味を持たせることが
重要だと考えているので、こうすることで大元のイメージから
離れすぎることもなく独創性のあるデザインをスムーズに作り
上げていくことが出来ると思います。
---気分転換には何をしていますか?
仕事机の周りにはたくさんの変形玩具やパズルが置いてあるので
休憩時間によくいじっています。パーツを動かす度に手に伝わ
るカチッカチッといった感触が心地良いのでとても癒されますね。
その他にはベランダで飼っているカメやメダカをぼーっと眺め
るのもいい気分転換になっています。
---初めてのお仕事はどんな内容でしたか?
初めてご依頼いただいたのは版権物のカードイラストでした。
今まで知り合いのために無償でイラストを提供することは多々
ありましたが、金銭の発生する正式なお仕事としてのご依頼は
初めてだったので、驚きつつもとても嬉しかったですね。
当時は自分に務まるものかと不安でしたが、そのクライアント様
には現在もお世話になっているので良い結果を残せたのではな
いかと思います。
---また思い出深い案件があれば、どんな内容だったか教えてくださいますと幸いです
ビルにプロジェクションマッピングでショートアニメを投影する企画
があったのですが、その映像用のイラスト素材を制作する案件が
一番印象に残っています。
コンセプトアートに始まりキャラクターデザイン・作画アニメー
ション・CGテクスチャ・実写用のプロップ制作まであらゆること
に関わらせていただきました。
---一番の得意分野はどのようなイラストですか?またイラストを描かれる上で一番こだわられているポイントがあれば教えてください
一番得意なのはドラゴンや怪獣といった空想生物のイラストです。
実在するものには必ずお手本が存在するので、それに囚われる
ことなくのびのびと描くことが出来ます。
とはいえ最低限のリアリティは必要になってくるので、立体とし
ての整合性が取れるように、骨格や筋肉の流れが不自然にならな
いように注意を払っています。
また、架空の生物を生き生きと見せるために、表情の描写には
特に力を入れています。
---イラストレーターになって大変だったこと大事なことを教えてください
職業としてのイラストレーターを始めて一番大変だったのは
純粋に描く枚数が増えたことです。
長時間の作業ではどうしても疲れが残りますので、描きたい・描か
なくてはいけないときに腕が痛くて本調子が出せないのはとてももどかしいですね。
また、制作枚数が増えれば増えるほどスケジュールの調整や
クライアント様との連絡のやり取りも大変になっていくので
体調も含めて自己管理はとても大切だと思います。
---今後やりたい仕事や、どのような活躍をしたいか教えてください
小さい頃からゴジラやウルトラマンといった特撮作品が大好き
なので、怪獣,怪人デザインのお仕事に関わってみたいですね。
そのためにも自分の作品を見た方が一目で自分の作品だとわか
るくらいに画風と画力を磨いていきたいと思います。
---これから業界を目指す若い世代の皆さんにメッセージをお願いします
どんどん作品を作って世間に公開していくことが大切だと思います。
特に今は誰でも気軽にweb上に作品を投稿・閲覧できるサービス
が充実しているので必ず誰かの目に留まります。
現に私がそうでしたが、そこからお仕事に結びつきそのままイラ
ストレーターになったというケースも少なくはないと思うので
物おじせずに作品を世に出していってほしいですね。
おわりに
架空の生き物だからこそ必要になってくるリアリティに対して、
表情やデザインの取り入れ方に、とてもこだわれていらっしゃるのだと感じました。
今後とも、塗壁さんの画風と画力がさらに洗練されていくのが楽しみです!